玉田企画『夏の砂の上』@北千住・BUoY

玉田企画で、僕以外の人の戯曲を上演するのは初めてです。
「夏の砂の上」は90年代後半の長崎を舞台にした会話劇で、松田正隆さん初期の作品です。僕は、10年くらい前に初めて読んで、衝撃的に面白くて、いつかこんな作品を書けるようになりたいと思いました。10年経った今でも、力及ばず、そのとき思ったような作品は書けていないのですが、それ以降、僕の頭の中にこの作品が一つの基準としてあって、自分が戯曲を書く際にちょっとずつ影響を受けてきたと思います。松田さんはどうやら今作を今の僕と同じ年のときに書いたらしくて、なんて早熟な人なんだと驚き、それに比べて、自分はなんて幼いんだと恥ずかしくなります。演出することで少しでも学べたらと思います。面白い作品なので是非観に来てください。

演出 玉田真也


松田正隆

出演
奥田洋平青年団
坂倉奈津子(青年団
浅野千鶴(味わい堂々)
祷キララ
用松亮
山科圭太
西山真来(青年団
岡部ひろき

北千住に行くのは随分久しぶり。30年ぶりとかかも。もちろん北千住・BUoYに行くのも初めて。元々銭湯だったところを改装したらしい。地下に劇場があって、2階にカフェがある。
舞台装置は8畳の日本間。奥にも部屋があるのが珍しい。90年代の長崎の夏の話なので、蝉の声が聞こえて、主役はランニング姿で出てくるし、扇風機を回している。コート姿の客席とのギャップが面白い。
玉田真也が惚れ込んだ脚本だけあって、確かに面白かった。説明的なセリフがなくて、ちょっとした会話の中から背景が浮かび上がってくる。肝はやっぱり、主人公の姪である優子を演じた祷キララだろうな。独特の存在感が舞台を支配していた。エロティックな展開になるのか、なるのかと思わせてならないというのも面白かった(表には現れないだけで、実際にはなっていたのかもしれない。そのあたりは観客の想像に委ねられている)。
クッションなしのパイプ椅子に2時間というのはきつかったが、実に充実した演劇体験だった。

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