仙台の国立大学・杜乃宮大学医学部法医学教室。解剖技官・梨木楓は、上司である若き准教授・今宮貴継とともに日夜、警察から運び込まれる身元や死因が不明の死体を解剖している。彼らが遭遇するのは、温泉旅館で不審死した編集者(「恙なき遺体」)、顔面を破壊され手足が切断された沼の中の死体(「誰そ彼の殺人」)、限界集落の小さな池に遺棄された老人(「蓮池浄土」)、降りしきる雨の中、轢き逃げで道端に放置された女子高校生(「安楽椅子探偵、今宮貴継」)など、どれも悲惨な人間の最期の姿だ。事故か殺人か―。今宮と梨木は、遺体の外傷を観察、内臓の全摘出後、病理検査にかけ、細胞の一つ一つまで検分。犯人でさえ気づいていない証拠にたどり着く…。
現在、某大学医学部法医学教室にて解剖技官を務めている著者が自身の経験を元にして書いたミステリー。デビュー作にしてはよく書けていると思うが、舌の肥えたミステリーファンにはちょっと物足りないんじゃないかな。