理不尽なイジメに苦しむ少年が出会った、赤く染まる白い鳩。家族の在り方に戸惑う少女を奮い立たせた、一台のピアノ。事故で娘を亡くした父親の苦しみを断ち切らせた、片腕のない男。バスを降りたその街で、人々は傷つき憂えながら、静かに痛みを超える。九つの物語が呼び覚ます、あの日の記憶―。深い孤独の底に一筋の光が差し込む、著者初の短編小説集。
後記に「どんなに幼い子でも読んでわかるものが書けたら」とある通り、平易な文章で綴られている。ただ、内容的には子どもに読ませるにはちょっとどうかなという話もある。
事故で娘を亡くした父親の苦しみを描いた「天使のおやつ」は子どもの年齢が自分の子どもに近いので、読んでいて辛かった。ただ、どれも自分の人生にありえたかもしれない物語となっている。
特に意図はないのかもしれないが、半数ほどの作品に路線バスが登場する。この、登場人物たちがバスに乗っているシーンが何故か印象に残ったね。