傷だらけの店長 〜それでもやらねばならない〜(伊達雅彦)★★★★★ 9/14読了

カリスマ書店員の話でもなくかしこまった書店論でもない、ただ実直にただ本が好きな一書店店長の不器用な生き方をリアルに描いた自伝的連作短編。
書店員なら誰でも直面する諸問題、プレッシャーをかける上司、うまく扱えないアルバイト、繰り返される万引き、毎年やってくるノルマ、強要される全国データ、色々なものに迫られ、疲弊していく姿に共感を生み、そして、励まされる一冊です。

実に、身につまされて、共感できて、励まされる一冊だった。
書店の店長の日常がリアルに描かれていて、書店の裏側を垣間見ることができるし、現在の出版業界の問題点なども見えてくる。それはそれで面白いのだが、「別に本屋に興味ないし」ということで手に取らないとしたら惜しい。
たまたま、書店の店長の奮闘記であるが、根っこには「働くということはどういうことなのか」という問いがあるのだ。私は本屋に勤めているわけではないが、著者と年齢が近いこともあり、痛いほど共感できた。というのも、私も社会人になって約20年が経ち、モチベーションの低下や現況への行き詰まり感をひしひしと感じていたのだ。
そんな折り、この本を読んで、ああこんなにも本が好きで頑張っている人がいるというのは実に励みになった。どのような業界の人でも自分の境遇に置き換えて読むことができるだろう。行き詰まりを感じている全ての勤め人にオススメしたい。

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