グレート・ギャツビー(スコット・フィッツジェラルド)★★★☆☆ 1/12読了

大昔に映画を観たときにあまりにもつまらなかったので小説も敬遠していた。しかし、村上春樹の翻訳となれば話は別だ。で、読み終えたのだが、やはりあまり面白いとは思えない。

「『グレート・ギャツビー』って読みましたけど、あれって村上さんが言うように、そんなにすごい作品なんですかね?」と口にする人も少なからずいる。僕にはそれがよくわからない。ちょっと待って下さい。『グレート・ギャツビー』がすごい作品じゃなくて、ほかの何がいったい「すごい作品」なんですか・・・、とつい詰め寄りたくもなってくる。しかしその一方でまた、そういうことを口にする人々の心情も全くわからないではない。というのは、『グレート・ギャツビー』はすべての情景がきわめて繊細に鮮やかに描写され、すべての情念や感情がきわめて精緻に、そして多義的に言語化された文学作品であり、英語で一行一行丁寧に読んでいかないことにはその素晴らしさが十全に理解できない、というところも結局はあるからだ。

引用が長くなったが、訳者あとがきで村上春樹はこう書いている。要するにそういうことなのかもしれない。ただ、村上春樹がこの作品に影響を受けているのだなということはよくわかった。『ダンス・ダンス・ダンス』の五反田君はまるでギャツビーじゃないか。『ダンス・ダンス・ダンス』に出てくる私の好きな一節「人というものはあっけなく死んでしまうものだ。人の生命というものは君が考えいるよりもずっと脆いものなんだ。だから、人は悔いの残らないように人と接するべきなんだ。公平に、できることなら誠実に」は『グレート・ギャツビー』に出てくる一節「友情とは相手が生きているあいだに発揮するものであって、死んでからじゃ遅いんだということを、お互いに学びましょうや」から来ているのだろう。
今回はあまり『グレート・ギャツビー』の良さを実感できなかったが、日をおいて読み直すとまた違った感慨もあるかもしれない。その時を楽しみにすることにしよう。

グレート・ギャツビー
グレート・ギャツビースコット フィッツジェラルド Francis Scott Fitzgerald 村上 春樹

中央公論新社 2006-11
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