義理と人情とヤクザの町、宝町には2人の少年、クロとシロが住みついていた。親を知らない2人は、かつあげやかっぱらいで、毎日を過ごしていた。ある日、昔なじみのヤクザ、ねずみが町に戻って来る。何かが起ころうとしていると察したクロは、刑事の藤村、沢田に近づくが、確かな情報は得られなかった。が、実はレジャーランドの建設と、町の開発の話が水面下で進んでいた。町を守りたいクロは、狂気の行動に出るのだった・・。
上映時間:111分
監督:マイケル・アリアス
原作:松本大洋
脚本:アンソニー・ワイントラーブ
声の出演:二宮和也 、蒼井優 、伊勢谷友介 、宮藤官九郎 、大森南朋 、岡田義徳 、森三中 、納谷六朗 、西村知道 、麦人 、田中泯 、本木雅弘
傑作だよ、これは。観終わってこんなに興奮覚めやらないのは『ショーシャンクの空に』や『マトリックス』以来かな。原作の素晴らしさに改めて感動し、その原作を映画化に漕ぎつけたマイケル・アリアス監督およびスタッフの情熱に感動した。
家に帰ってすぐに原作を読み返した。あの松本大洋の世界観を映画で再現できるのかというのが観る前の心配だったのだが、そんな心配は杞憂だったことが分かった。再現どころか原作を超えたといっても過言ではない。省くところは省き、忠実に描くところは忠実に描かれている。松本大洋得意の落書きもちゃんと映画に出てくる。とにかく舞台となる宝町のディテールには圧倒された。それにしてもよくぞ全3巻の原作を111分に破綻なく収めたなという感も強い。収めるだけでなく、終盤イタチがクロを闇の世界に誘うシーンなどは原作を超越した映像表現になっていた。
絵のタッチは原作とはちょっと違って、少しかわいらしくなっている。だから、松本大洋の絵が苦手という人(私の妻もそう)も十分に楽しめると思う。気になっていた俳優たちの声も見事にハマっていた。声を聴いて俳優の顔が浮かぶこともなく物語に没頭できた。特にシロの声をやった蒼井優は素晴らしかった。宮藤官九郎も沢田という美味しい役をもらったね。
10年越しの思いを結実させたマイケル・アリアス監督とスタッフの皆さんには最大級の拍手を贈りたい。