町長選挙(奥田英朗)★★★★☆ 4/26読了

4つの短篇中表題作以外の「オーナー」「アンポンマン」「カリスマ稼業」の3つは実在の人物を題材にしている。「たかが選手が」と言った人と、ちょうど保釈された人と、宝塚出身で今もドラマの主役を張っている女優のことですな。この3作は今までのパターンとはやはりちょっと違う。というのは、患者自身が面白いからだ(特に「オーナー」と「アンポンマン」)。「町長選挙」だけは今までのパターンを踏襲している。
伊良部ものと言えば、体面が悪いからとかしがらみがあるからとか色々な事情でストレスやら鬱憤やらが溜まっている人たちの代わりに伊良部がはちゃめちゃをやってくれるところに爽快感がある(道路標識に落書きしたり、居眠りしている人のカツラ取っちゃったりね)。今回は「町長選挙」以外の3作でそれが薄い。患者が有名人だけに患者の方が目立っちゃって、伊良部の影が薄いのだ。それが残念だった。
ラストにホロリとさせるのも、伊良部ものの特徴だ。今回は「オーナー」でそれがきれいに決まっていた。このラストはなかなかいいよ。
町長選挙』は十分に水準をクリアした出来なのだが、もしこれを最初に読んでしまった人がいたら、是非前の2作も読んで欲しい。そっちは『町長選挙』よりももっと面白いから。

町長選挙
町長選挙奥田 英朗

文藝春秋 2006-04
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