バスジャック(三崎亜記)★★★☆☆ 12/11読了

『となり町戦争』の三崎亜記の新作短編集。新聞広告で大絶賛の嵐だった『となり町戦争』は大絶賛されるほどではなかったのだが、なかなかに不思議な話であり、才能の萌芽は見受けられた。その三崎亜記の新作ということで、期待半分、ダメだろうな半分で読んでみた。
『となり町戦争』の不思議さを踏襲しているのが「二階扉をつけてください」「バスジャック」「動物園」の3作。ただどうしても理に落ちすぎているというか、説明が多い。不思議な話なので、その不思議さを解説するために自分で発明したいろいろな用語を駆使するのだが、それをやられればやられるほどこちらは引いていく。そういうところをもうちょっとさらりとできないのかなと思ってしまう(新人作家にそれは酷なことかも知れないが)。
また、上記の3作を含め、どれを読んでも既視感が漂う。ミステリ性の薄い伊坂幸太郎、毒のない乙一村上春樹の出来損ない(おっと、これは言い過ぎだ)という感じか。さんざん書いてるけど、全体的にはそれほど悪くはない。1つ選ぶなら「動物園」かな。この作品にこの作家の進むべき道の可能性があると思う。但し、手練れの作家の作品も多い中、新人作家の次の作品に付き合う可能性は低いな。

バスジャック
4087747867三崎 亜記

集英社 2005-11-26
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