モンドヴィーノ ★★★★☆ アミューズCQN

ところで、ワインはお好きですか? ワインについて、不思議に思うことはありませんか?――ワインのおいしさや値段は誰が決めるのか、という誰もが不思議に思う大疑問に、ソムリエでもあるジョナサン・ノシター監督が挑む。ワインの値段を急上昇させる影響力を持つワイン評論家。世界を飛び回るワイン・コンサルタントアメリカの巨大ワイン企業、そして彼らの世界進出に脅える、フランスの小さな畑を守るブドウ生産者たち。そこにはワインと人生を共にする人々の、熱い人間ドラマが隠されていた…。

監督:ジョナサン・ノシター
出演:ミシェル・ロランロバート・パーカー、ユベール・ド・モンティーユほか

実に、実に興味深い映画だった。ワインを題材にした『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』あるいは『ボウリング・フォー・コロンバイン』という感じか。
ミシェル・ロランというワイン・コンサルタントがいる。ワイン・コンサルタントとはいろいろな醸造所と契約を結んで、ワイン造りに関するアドバイスをする仕事だ。彼は「色が濃く、果実味たっぷりで、力強く、若い段階から飲みやすい、いわゆるモダンなタイプのワイン造りを世界中で実践し、「パーカリゼーション」「ワインのグローバリゼーション」に拍車をかけ続けている。」
パーカリゼーション:カリスマワイン評論家、ロバート・パーカーが好むタイプのワインを作ることを揶揄してこう表現する。
ロバート・パーカーというワイン評論家がいる。「100点満点法のワイン評価が「わかりやすさ」でまずアメリカの消費者に受け入れられ、日本をはじめ各国の消費動向にも影響を与え続けている。」
モンダヴィ一族というアメリカ産ワインを世界ブランドにした華麗なる一族がいる。「カリフォルニアのナパ・ヴァレー<モンダヴィ>だけでなく、同地での「ムートン」とのジョイント・ベンチャーオーパス・ワン>の後、チリで「エラスリス」と<セーニャ>、トスカーナで「フレスコバルディ」と<ルーチェ>など、立て続いて名門とのジョイントに成功を収めた。」
これらのワイン・グローバル化の波の一方で、ド・モンティーユ一族という頑固一徹なワイン造りを実践しているファミリーもいる。「世評に合わせ、濃くてまろやかなワインを造る生産者が増えた中、若い段階では非常に飲みづらいが、10年、20年経過してようやく真価を発揮するワインを作り続けている」のだ。このユビール・ド・モンティーユの娘のアリックスが親譲りの頑固者で、好感が持てる。息子のエチエンヌもワインを造っている。
映画の中でよく「テロワール」という言葉が出てくる。日本語にすれば「地味」となるこの言葉の意味を「CinemaCafe.net」の特集記事から引いてみる。

Terroir テロワール
フランス語特有の語彙で、ある土地の土壌、地勢、気候などを包括した言葉。産地固有の味わいを指し、「グー・ド・テロワール」などと言う。コシヒカリは魚沼産が最高だとするならば、それは魚沼のテロワールが反映されているから。

ミシェル・ロランやモンダヴィの造るワインにはテロワールがないということになる。しかし、一方でそれほど熟成させずとも比較的美味しくて値段も安いワインを供給できる。この対比が興味深かった。監督のジョナサン・ノシターは別にどちらかに肩入れをした撮り方はしていない。実際どちらにも一理ある。ただ、個人的にはやはり「テロワール」のあるワインを飲みたい。
この映画のキャッチに「この映画を見ると、明日選ぶワインが変わります」と「誰かに話したくなる、ワインの話」というのがあるけど、まさにその通りだな。