俳句世がたり(小沢信男)★★★☆☆ 9/2読了

祭りに相撲、友人の死、敗戦の記憶、大震災──。浮き世に出逢うさまざまな出来事を、武玉川から虚子、子規、万太郎、あるいは漱石荷風など、古今の俳句をつうじて描く。笑いを織り込み権力を撃つ練達の筆に、私たちの生きる近年の世相が鮮やかに浮かぶ。俳句入門としても必読のエッセイ。

著者のことは知らなかったが、何かで本書の評を見て読んでみた。2010年から2016年の折々の世相を綴りながら俳句を紹介している。著者は1927年生まれ、今年の3月に亡くなった。本書の中では太平洋戦争や関東大震災東日本大震災などの話が多かった。碌でもない老人も多いけど、総じて年配の人の話には耳を傾けるべきだと思っている。著者の声が聞こえてくるようなエッセイだった。

泡(松家仁之)★★★☆☆ 8/31読了

男子高の二年に上がってまもなく学校に行けなくなった薫は、夏のあいだ、大叔父・兼定のもとで過ごすことに。兼定は復員後、知り合いもいない土地にひとり移り住み、岡田という青年を雇いつつジャズ喫茶を経営していた。薫は店を手伝い、言い知れない「過去」を感じさせる大人たちとともに過ごすうち、一日一日を生きていくための何かを掴みはじめる――。思春期のままならない心と体を鮮やかに描きだす、『光の犬』から3年ぶりの新作にして、最初で最後の青春小説。

初読みの作家。編集者としては「考える人 2010年 08月号」の村上春樹へのインタビューを読んだことがあった。既読感を感じる話だが、主人公の高校生が呑気症というのが面白い。ラストがあっさり目だったのも良かったかな。

ドメーヌ・ラファージュ ノヴェラム・シャルドネ 2018

[ドメーヌ・ラファージュ・ノヴェラム・シャルドネ]は、もちろんシャルドネ100%の白ワインなんですが、その味わいに変化と深みを出すために、大きな声では言えませんが、なんと別に仕込んだ高級ぶどうのヴィオニエ種のワインの澱を極少量だけ熟成段階で使用するんだとか!!
その微妙な加減は、まさにアッサンブラージュの天才だからこそ成せる神業!!
『白桃やアプリコットの濃密な香りに、少しチョークっぽい岩の感じ、 さらに白胡椒のスパイシーなアロマとブリオッシュの香ばしさ。 口に含めばとろりとした舌触りとともに、口中で膨らむトロピカルフルーツの香り。 上質な酸が縁取る濃厚な果実味は輝くように鮮やか。噛みしめてその旨みを味わい 尽くしたくなるほどの艶やかなフルボディ。 長く厚みのある余韻はまるで黄金色に熟れた果実そのもの。』
さすがラファージュ!! 感激の美味しさ、そしてやはり納得の完成度!! チキンソテーやグラタン、白身魚のムニエルなどにも幅広く相性のよいワインです。

夕飯は焼きうどん、タコのねぎ生姜マリネ、ザーサイキャロットラペ。タコのねぎ生姜マリネは気に入ったので何回か作っているが、これはやっぱり美味しいね。
ワインは京橋ワインで買ったシャルドネ。トロピカルフルーツの香りがして華やか。温度変化を楽しもうかと思ったが、味がボケそうだったので、アイスクーラースリーブをつけて冷やして飲んだ。まあ、まずまずですかね。

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サルタレッリ・ブリュット ヴェルディッキオ NV

厳選したヴェルディッキオのみで造られ、澱とともに熟成させるシュール リー製法と長期タンク内で二次醗酵を行う「シャルマ ルンゴ方式」により造られています。細やかな泡立ちとフレッシュなリンゴや梨を思わせる溌剌としたアロマ。飲むと豊かな果実感に酸とミネラルが綺麗に重なり、軽やかながら癖になりそうな心地よい風味が続きます。サルタレッリが造るヴェルディッキオの素晴らしさは泡となっても見事に感じられます。

夕飯は鶏の唐揚げ。今回は市販のタレや粉を使わずに自力で作った。タレは醤油、水、酒、砂糖、塩、胡椒、おろしショウガ、おろしニンニク。ショウガとニンニクはチューブではなく、本物をすりおろした。粉は片栗粉。食べてみると味はほどよい薄味。ほのかにニンニクが香る。身はジューシーで、衣はさっくり。我ながら美味しくできた。まあ、漬け込んだ鶏肉の水分をペーパーで取ってから、片栗粉をまぶしたりと、手間は掛けたからね。
ワインはワイン見聞録で購入したこちらの泡。これは結構美味しかった。柑橘系でサッパリしているんだけど、しっかり味があって、かつ飲み飽きない。エチケットもかっこいいし、これはまた飲みたいな。

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神の悪手(芦沢央)★★☆☆☆ 8/26読了

破滅するとしても、この先の世界が見たい――将棋に魅せられた者たちの苛烈な運命。
棋士の養成機関である奨励会。年齢制限による退会が迫る中でも昇段の目がない岩城啓一は、三段リーグ戦前夜、対戦相手からある“戦略”を持ちかけられるが……。追い詰められた男が将棋人生を賭けたアリバイ作りに挑む表題作ほか、運命に翻弄されながらも前に進もうとする人々の葛藤を、丹念に描き出す将棋ミステリ。

将棋が分かる人にとっても、将棋がよく分からない人にとっても、中途半端な印象を受けた。全体的に今ひとつだったが、最後の駒師の話はまあまあ良かった。

終わりは始まり(中村 航&フジモトマサル)★★☆☆☆ 8/24読了

可愛くて不思議で面白い、ぐるぐるワールド
読者が投稿した回文をもとに、フジモトマサルのイラストレーションと、中村航のショートストーリーをコラボレーションさせた掌編集。言葉遊びの面白さを堪能できる、めくるめく回文の世界。

全体的にはもう一つだったかなあ。回文自体にそれほど面白いものがなかったんだよな。むしろ巻末の「その他の優秀回文」の中の「酢でしめた飯です」とか「稲妻はかつらに落下はまず無い」とかの方が好きだったな。

第八の探偵(アレックス・パヴェージ)★★☆☆☆ 8/22読了

独自の理論に基づいて、探偵小説黄金時代に一冊の短篇集『ホワイトの殺人事件集』を刊行し、その後、故郷から離れて小島に隠棲する作家グラント・マカリスター。彼のもとを訪れた編集者ジュリアは短篇集の復刊を持ちかける。ふたりは収録作をひとつひとつ読み返し、議論を交わしていくのだが……フーダニット、不可能犯罪、孤島で発見された住人の死体──7つの短篇推理小説が作中作として織り込まれた、破格のミステリ

ちょっと凝りすぎだな。意気は感じるんだけど、あんまり凝りすぎると面白くなくなっちゃうんだよな。