江戸の人々に雪国の風物や綺談を教えたい。越後塩沢の縮仲買商・鈴木牧之が綴った雪話はほどなく山東京伝の目に留まり、出板に動き始めるも、板元や仲介者の事情に翻弄され続け――のちのベストセラー『北越雪譜』誕生までの長すぎる道のりを、京伝、弟・京山、馬琴の視点からも描き、書くことの本質を問う本格時代長篇。
『万波を翔る』の田辺太一、『剛心』の「妻木頼黄(よりなか)」に引き続き、本作も実在するけど、一般的にはあまり有名ではない鈴木牧之が主人公。越後の雪話を江戸で刊行するまでの長きにわたる話だが、鈴木牧之以外にも、山東京伝、弟の京山、滝沢馬琴らの話にも多くのページを割いている。折しも「べらぼう」放映中だが、江戸の出版業界の話も興味深かった。鈴木牧之は自分が死ぬ前に『北越雪譜』が刊行されて本当に良かったね。