素敵な圧迫(呉 勝浩)★★★☆☆ 11/26読了

『爆弾』『スワン』の気鋭が放つ、超弩級のミステリ短編集

「ぴったりくる隙間」を追い求める広美は、ひとりの男に目を奪われた。あの男に抱きしめられたなら、どんなに気持ちいいだろう。広美の執着は加速し、男の人生を蝕んでいく――(「素敵な圧迫」)。

交番巡査のモルオは落書き事件の対応に迫られていた。誰が何の目的で、商店街のあちこちに「V」の文字を残したのか。落書きをきっかけに、コロナで閉塞した町の人々が熱に浮かされはじめる――(「Vに捧げる行進」)。

ほか全6編を収録。
物語に翻弄される快感。胸を貫くカタルシス
文学性を併せ持つ、珠玉のミステリ短編集。

「素敵な圧迫」では石田夏穂を、「論リー・チャップリン」では奥田英朗の伊良部ものを想起した。まあ、もちろん違うんだけど。作品ごとに毛色が違うので、バラエティに富んでいるという点では良かった。