モチロンプロデュース『阿修羅のごとく』@シアタートラム

だいこんの花』(1970年)『時間ですよ』(1971年)『寺内貫太郎一家』(1974年)など、
数々の話題作ドラマを生み出し、昭和を代表する脚本家であり、
小説家、エッセイストとしても活躍した向田邦子
食、旅、ファッションなど、あらゆる物事に興味を持ち、好奇心旺盛なその生き方は、
今なお多くのクリエイターたちに影響を与えています。
今回の公演は、その代表作のひとつ『阿修羅のごとく』(1979年)の舞台化です。
1979年ドラマ放送当時、斬新な演出と、
加藤治子八千草薫いしだあゆみ風吹ジュンという華やかな実力派女優の共演で
視聴者に鮮烈な印象を残し、
その後繰り返される再放送の度に、作品のファンを増やしていった名作です。

今回の舞台は、四方向に客席を設置。ステージを囲む形でご覧頂くセンターステージです。
凝縮した空間で、四姉妹の戦いに立ち会っているような、臨場感のある生々しい作品を目指します。

作:向田邦子
脚色:倉持裕
演出:木野花

出演;小泉今日子小林聡美安藤玉恵夏帆岩井秀人山崎一

小泉今日子小林聡美安藤玉恵夏帆の四姉妹と来れば、チケット取らないわけには行かないでしょう。男優も岩井秀人山崎一だしねえ。小泉今日子小林聡美夏帆の3人は舞台で観るのは初めて。特に小林聡美は楽しみにしていた。小林聡美といえば、やっぱり「やっぱり猫が好き」の恩田きみえでしょう。「やっぱり猫が好き」では三姉妹の末っ子だったが、今回は四姉妹の次女で子供も2人いる設定だ。
今回の舞台は、四方向に客席を設置した四角いセンターステージとなっている。最初は土俵のようだなと思ったが、能舞台のようでもある。私は東サイドの席だったのだが、サイド席は2列しかないので、ステージが近い。しかも俳優はステージの周りを結構歩くので、目の前で俳優たちを観ることができた。舞台の四隅には電話台があって、その上に黒電話が乗っている。この黒電話が全体を通してキーとなってたね。ほとんど素舞台の上に抽象的な椅子やテーブルなどを置いていくのだが、場面ごとにものを変えたり位置を変えたりするので、黒衣さんたちは結構大変そうだった。俳優もみんな二役をしているので、着替えも大変そうだった。
私は俳優の岩井秀人が好きなのだが、ボクサー役ということで肉体改造していた。ずいぶん絞ってたね。歌舞伎風に柝の音を鳴らしたり、フラメンコ風の場面があったりして、なかなか面白い演出だった。中でも一番好きだったのは、終盤で小林聡美小泉今日子が電話で話すシーン。四角い舞台上の対角に置かれた電話台の上の黒電話で話していて、最初はそれぞれ外を向いて話しているのだが、途中から内側を向いてお互いを見ながら話すようになる。実際には絶対にあり得ない舞台ならではの演出で、このシーンはとても良かった。
まだ二日目だったので、全体的に練れてない感じはあったが、至近距離で豪華キャストが演じているのを観られて、とても贅沢な時間だった。