つげ義春日記(つげ義春)★★★☆☆ 9/12読了

昭和五〇年代、結婚し長男も誕生して一家をかまえた漫画家つげ義春は、寡作ながらも「ねじ式」「紅い花」など評価の高い作品群が次々と文庫化され、人気を博す。生活上の安定こそ得たが、新作の執筆は思うように進まず、将来への不安、育児の苦労、妻の闘病と自身の心身の不調など人生の尽きぬ悩みに向き合う日々を、私小説さながら赤裸々に、真率かつユーモア漂う筆致で描いた日記文学の名篇。

つげ義春の熱心な読者ではなく、特に思い入れもなかったのだが、新聞の書評で気になって読んでみた。長男が生まれた昭和50年から55年の日記。とにかく内容が暗い。自分も体調が悪いし、妻は癌になるし、長男も始終熱を出している。全編にわたって、常に誰かの調子が悪いという描写が続くが、不思議と読んでしまう。趣味と実益を兼ねて、中古カメラの売買をしていて、その辺の話は面白かったし、印税の話とかが金額入りで出てくるのも興味深かった。巻末の解説中にある家族写真はとても幸せそうで、なんだかホッとした。