どうしても生きてる(朝井リョウ)★★★☆☆ 1/4読了

死んでしまいたい、と思うとき、そこに明確な理由はない。心は答え合わせなどできない。(『健やかな論理』)。家庭、仕事、夢、過去、現在、未来。どこに向かって立てば、生きることに対して後ろめたくなくいられるのだろう。(『流転』)。あなたが見下してバカにしているものが、私の命を引き延ばしている。(『七分二十四秒めへ』)。社会は変わるべきだけど、今の生活は変えられない。だから考えることをやめました。(『風が吹いたとて』)。尊敬する上司のSM動画が流出した。本当の痛みの在り処が映されているような気がした。(『そんなの痛いに決まってる』)。性別、容姿、家庭環境。生まれたときに引かされる籤は、どんな枝にも結べない。(『籤』)。現代の声なき声を掬いとり、ほのかな光を灯す至高の傑作。

新年1冊目にしては、なかなかにヘヴィーだった。世の中を生きづらいと感じる人たちの短編集だが、どこからしら自分に重なるところはあるだろう。人生に暗転はないし、CMを挟んだら次の場面に移っているということもないんだよな。「どうしても生きてる」っていうタイトルが沁みるね。