ぼくは覚えている(ジョー・ブレイナード)★★★☆☆ 3/6読了

「ぼくは覚えている」というフレーズで始まる短い回想、1950年代アメリカ大衆文化の記憶、詩的で鮮烈なイメージが横溢する。美術家としても名高い異才の傑作メモワール。

恵文社一乗寺店・店長のブログで知った本。「私がこれまでに読んだすべての作品のなかでも、滅多にお目にかかることのない〈完全にオリジナルと呼べる作品〉の一つである。」とポール・オースターが絶賛し、復刻版が発行されることになったらしい。
ほぼ全てが「ぼくは覚えている(I remember)」というフレーズで始まる文章でできている。

ぼくは覚えている。「ありがとう」と言われて「ありがとう」と返したら、相手が言葉に詰まったことを。
ぼくは覚えている。ぎゅっと目をつぶると、いろんな色や模様が見えたことを。
ぼくは覚えている。学校の机に彫られた落書きと、それをボールペンでぐりぐりとなぞったことを。

著者はゲイだったらしく、その手の話も結構出てくる。アメリカの1950年代の固有名詞もかなり出てくるのだが、巻末に注も付いているので参考になる。
「ぼくは覚えている」というフレーズはなんか癖になるね。自分でもやりたくなるんだよな。まあ、やめておくけど。
最初だから当然頭から読んでいったけど、あとがきにもあるように「通勤通学の合間や「トイレのおとも」として、適当にぱっと開いたページに目を通して、何かしら共感したり、笑ったり、はっと胸を突かれたり、といった気ままな味わい方をするのもいいかもしれない」。図書館で借りた本なので、返却期限までしかその楽しみはないけれど。

ぼくは覚えている (エクス・リブリス)

ぼくは覚えている (エクス・リブリス)