遡行 ---変形していくための演劇論(岡田利規)★★★★☆ 3/5読了

社会に対して芸術のできる“働き”とは何か?現代演劇の旗手、チェルフィッチュ岡田利規が書き下ろす、演劇の根源的な幹を抱きながら、新しい場所に辿り着くための方法。

「よく分からない」とか「微妙だなあ」とか思いながらもチェルフィッチュの芝居は結構観ているので、この本には興味があった。
予想通り、示唆に富んだ読み応えのある本だった。執筆時の最新作である『現在地』から過去に遡る形で論は進んでいく。ドラマ性からは遠いところから出発した著者が、震災を経て、ドラマ(フィクション)の力を再認識したという話は興味深い。今目の前にある現実がただ一つの現実ではなく、舞台上にそれに代わり得るもう一つの現実(フィクション)を提示し、それが目の前の現実を変えるきっかけになるのではないかという試みだ。古くて新しい考え方である。
多少頭でっかちの感もあるが、ここまで色々考えている演劇人も少ないのではないだろうか。『ZERO COST HOUSE』もなかなか良かったし、次の新作が気になるね。

遡行 ---変形していくための演劇論

遡行 ---変形していくための演劇論