ホテルの前でエリックからメモを渡された。彼の電話番号だった。「国番号も書いてあるから」とエリックは言った。すぐに春香も自分の電話番号を渡そうと思った。しかしエリックが、「電話、待ってる」と言う。「電話を待っている」と言われたはずなのに、春香の耳には「信じてる」と聞こえた。春香は自分の番号を渡さなかった。信じている、あなたを、運命を、思いを、力を―。商社員、湾生の老人、建築家、車輛工場員…台湾新幹線をめぐる日台の人々のあたたかな絆を描いた渾身の感動長篇。
まあ、上のあらすじに書いてあるとおり、台湾新幹線建設をめぐる日台の人々の話である。一見バラバラに見えた登場人物たちが最後には収束してくるのも、まあ、予想通りではある。
感動的なシーンもあるんだけど、それほど感傷的にはさせず、登場人物たちはそれぞれ難しい問題を抱えていて、一応の解決は見るけれども、完全なるハッピーエンドというほどお気楽なラストでもない。その辺のさじ加減が読んでていて心地よかった。全ての登場人物の今後を応援したくなったね。
- 作者: 吉田修一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/11/01
- メディア: 単行本
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