イキウメ「散歩する侵略者」@神奈川芸術劇場大スタジオ

地球侵略会議はファミレスで


日本海に面した小さな港町。大陸に近いこの町には同盟国の大規模な基地がある。この国にとって戦略的に重要な土地だ。加瀬真治は、地元の夏祭が終わると性格が一変していた。今までの記憶を失くし、町の徘徊を始める真治。夫を介護しなければならなくなった妻の鳴海は、新しい生活に戸惑う。町に事件が起きる。それは老婆が息子一家を刺殺した後、自殺するという凄惨なものだった。同じ頃、海岸線では町の人々が奇妙な光を見る。それが隣国のミサイル誤射であることをテレビのニュースは伝える。凄惨な事件と、軍事的な緊張とが相まって、町には不穏な空気が流れていた。そして、真治は鳴海に告白をする…。


[作・演出] 前川知大
[出演] 浜田信也、盛 隆二、岩本幸子、伊勢佳世、森下 創、窪田道聡、大窪人衛、加茂杏子/ 安井順平

舞台は居間と診察室とロッカールームのような場所が境目なしに緩く横につながったようになっており、椅子やテーブルなどはすべて灰色になっている。
主人公の真治は宇宙人に体を乗っ取られてしまい、その乗っ取った宇宙人は散歩をしながら、地球侵略のために人間から「概念」を奪い取る作業をしている。奪い取られた人間は「その概念」がなくなった状態になってしまう。
あんまり書くとアレなのでもうやめるが、設定的には昔の眉村卓の作品を思い出した。
舞台が複数の場所になっているので、同時にシーンが展開することが多い。といっても、みんなが同時に喋ってしまうわけではなく、居間でのAというシーンがフェードアウトしながら、診察室でBというシーンが始まるみたいな感じだ。
ラストはベタと言えばベタだが、それでもやはり泣けた。イキウメの代表作というのも頷ける。