眠りのともだち(イキウメ)赤坂REDシアター

早坂水穂(小島聖)は夫の郁夫(浜田信也)と別居中。半年前友人の寺越(岩本幸子)宅へ引越し、ルームシェアをしている。郁夫は諸事情により、三日前からその部屋に厄介になっている。寺越は数日前から行方がわからず、水穂は警察に電話をした。水穂が郁夫に夢の話をすると、二人は同じ夢を見ていることに気がつく。


作・演出:前川知大

出演:浜田信也、盛 隆二、森下 創、緒方健児、宇井タカシ、岩本幸子、日下部そう(「散歩する侵略者」の色悪)、奥瀬繁(「PLAYER」の脱線する環境学者)、小島聖

赤坂REDシアターは赤坂見附からほど近い小奇麗な劇場だった。席は前から2列目。いい席だった。舞台装置は非常に簡素だ。手前が階段状になっていて中央付近が高くなっている。そこにベッドを思わせる木の台と丸椅子が1つ。後方は溝のように深くなっている。舞台の脇に飾り戸棚のようなものがあって、ここが主人公の寝室であることを伺わせる。
主人公の早坂水穂(小島聖)は夢の中で覚醒してしまう。この状態を「明晰夢」というらしいのだが、この夢の中で夢の住民に出会う。そして、起きている時がレイヤー0で、この状態はレイヤー1であると教わる。本来はここで起きなければ行けないのだが、レイヤー1で更に寝てしまいまた覚醒する。そこはレイヤー2であり、段々レイヤーを下っていってしまった水穂はレイヤー0では意識不明の昏睡状態に陥っている。
この夢の世界で、ある犯罪が進行形であることを知ったり、夢の住人や彼の助手に出会ったり、昏睡状態の水穂に話しかける別居中の夫の本音を聞いたりする。
最後に水穂はレイヤー0に戻れるのだが、なかなかに怖い話だったね。イキウメのサイトにある「“センス・オブ・ワンダー”な物語世界を、舞台表現する集団。作・演出の前川知大が紡ぐ「ちょっと怖くて、不思議な物語」を、イキウメン(俳優たち)が体現。名前は「生きたまま彼岸を覗く」という、作劇コンセプトに由来する」というのはなるほどこういうことかと納得した。
シンプルな舞台装置の使い方も上手かった。寝室のベッドだったものが、場面を転じて病室のベッドになったり、手前の階段状の部分を夢のレイヤーに見立てたり、手前で芝居をしながら同時に奥の溝の部分でも芝居を進行させたりしてね。夢の住人たちがレイヤー0では睡眠コンサルタントとそこの掃除夫を演じるという一人二役もなかなか良かった。
私の隣の人はほとんど寝ていたのだが、夢うつつの状態でこの芝居を聞いて、夢を見ていたとしたらどんな状態なんだろうと思ってしまった。