青山演劇LABO#002 グリング第17回公演「吸血鬼」

渋谷のアパートで女が死んだ。
女は独りだった。
嗚咽すら誰にも届かないほど独りで、夜の街に灯りを求めていた。
彼女の闇のような孤独が"渋谷"を越え“青山”で浮き彫りになる…。


青木豪、待望の書き下し新作!


作・演出:青木豪
出演:杉山文雄 中野英樹 萩原利映 安藤聖 遠藤隆太 高橋理恵子演劇集団 円) 辰己智秋(ブラジル) 平田敦子 みのすけナイロン100℃


会場:青山円形劇場
公演日程:2009年3月5日(木)〜3月11日(水)

珍しく抽象的な舞台装置だった。奥に2階建てのアパートがあり、中央の広場のようなところには立方体や長方体の箱がオブジェのように置かれている。
物語は、粗末なアパートの一室で死んでいた広告代理店のOL藤村恭子(高橋理恵子)の死因を探る、友人で脚本家の菊池顕(杉山文雄)の回想の形をとって進む。そこにチンドン屋や恭子の兄夫婦や菊池のマネージャーや女優の卵が絡んでくる。
東電OL殺人事件に青木豪自身の体験を絡めたような脚本だが、どうにも味が悪い。ONEOR8の『莫逆の犬』のときのような味の悪さを感じた。人間の孤独を描いているのだが、どうもセリフが芝居の上を上滑りしてしまって、少なくとも私の胸には届かなかった。『吸血鬼』というタイトルもどうなんだろう。
ド素人の芝居好きである私も、ここにきて芝居って何だろうってちょっと考えてしまった。
空席があるためにおそらく客を中央に寄せたのだろう。端の方の席がワンブロックほどまるまる空席になっていたのもちょっと寂しかった。上演時間は約1時間50分。