下巻は一気に読んだ。上巻で順調に発展を遂げた「エセ教団」は下巻で奈落に落ちてゆく。読みながら平野啓一郎の『決壊』を思い出していた。『決壊』では、ネットやいじめや無差別殺人などを扱っていたが、現代人の心の闇やマスコミの怖さといった点では通ずるところが多い。
『決壊』が文学寄りなのに対して『仮想儀礼』はエンタメ寄りなので、読みやすさからいったら『仮想儀礼』の方が上だろうか。主人公の2人を筆頭にして、人物造形も冴えている。個人的には元作家の井坂のキャラには戦慄した。恐るべき人物なのだが、その対比としてルポライターの安藤を置いているところに物語としてのバランスが上手く取れている。
「宗教」とは何なのか、も深く考えさせるし、純粋に読み物としても面白い。これは傑作だね。既に本年度の5本の指には入るかもしれない。
仮想儀礼〈下〉 | |
篠田 節子 新潮社 2008-12 売り上げランキング : 689 おすすめ平均 篠田節子に称賛 「宗教」の真相へ ページを捲る手が止まらない! Amazonで詳しく見る by G-Tools |