母さんは、もう家を出ただろうか――。父が去ったあとの母と子の暮らし。あずけられた祖母の家で、あたりを薄く照らしていた小さな電球。子ども時代から三十数年、兄妹のように年を重ねてきた男女の、近いとも遠いとも計りかねる距離。大人の屈託を見つめる少年の姿と惑いを抱えたまま刻まれてゆく人びとの歳月を描く、『雪沼とその周辺』に連なる待望の連作短篇集。
『雪沼とその周辺』よりも子どもの目を通して書かれた作品が多い。しかも、親が離婚してしまった、あるいは離婚しそうな境遇の子どもの目線だ。だからと言って、不幸な話が多いというわけではないのだが、全体的なトーンはちょっと暗めだな。
「滑走路へ」や「苦い手」なんかは結構良かったが、全体としては『雪沼とその周辺』の方が良かったね。
未見坂 | |
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