最年少でオレンジ賞を受賞したアフリカ出身の女性作家による、O・ヘンリー賞受賞作を含む傑作短編集。ナイジェリアの少女がコネチカットに渡って体験するアメリカンライフを切なく繊細に描く表題作他、悲劇的なテーマを悲劇的には書かないという著者の、のびやかな感受性が息づく作品集。
ジュンパ・ラヒリ、ラッタウット・ラープチャルーンサップ、イーユン・リー、楊逸、そしてC・N・アディーチェ(段々リストが長くなるな)。みな母国語ではない言語で小説を書き、そして認められている作家たちである。
異国へ渡って生活するということは、文化の違いもあるだろうし色々な摩擦も生じるだろう。その辺のことを書き記すだけで、私のような平凡な人生を送っている人間には、読むに値する物語になる。逆に言えば、そのような普通ではない体験をした人はそれだけで一編の小説をものすることができるわけで(もちろんその他の才能も必要だが)、ちょっとずるいなという気がしないでもない。
しかし、上述の作家たちはさすがに認められているだけあって、特異な体験をただ綴っているだけではない。そこには鋭い観察眼があり、文学的な感性が宿っている。
本書も例外ではない。ナイジェリアとアメリカの文化の違いもさることながら、ナイジェリアでの民族紛争という重いテーマをも扱っている。しかし、それらの悲劇的なテーマを扱っていても、単に悲劇的に書くのではなく、文学として昇華させるだけの才能がある。
冒頭の2作品、「アメリカにいる、きみ」と「アメリカ大使館」が特に印象深い。
アメリカにいる、きみ (Modern&Classic) (Modern&Classic) | |
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