チェルフィッチュ『フリータイム』Super Deluxe(六本木)

2年半ぶりの新作公演『フリータイム』!!


チェルフィッチュは2007年5月、初めての海外公演として、ヨーロッパ・パフォーミングアーツ界の最先端であり最重要フェスティバルと称される『KUNSTENFESTIVALDESARTS2007』に招聘され『三月の5日間』を上演し、予想をはるかに上回る反響を頂きました。そして、最新作『フリータイム』では、KUNSTENFESTIVALDESARTS(ブリュッセル)、Wiener Festwochen(ウィーン)、Festival d’AUTOMNE(パリ)との国際共同制作が実現しました。チェルフィッチュとしての新作は2年半ぶりとなります。さらに岡田利規は本作で、また新しい演劇的アプローチに挑戦します。ますます世界的な注目を集めるチェルフィッチュの新作にご期待下さい。


会期:2008年3月5日(水)〜18日(火)
会場:Super Deluxe(六本木) 


作・演出:岡田利規
出演:山縣太一 山崎ルキノ 下西啓正 足立智充 安藤真理 伊東沙保

普通の劇場ではなく、しかも指定席ではなくて整理番号順の入場だったので、客入れの段取りが非常に悪かった。中央のステージを挟むように前後に客席がある。客席と言っても、急造のもので背もたれの付いた椅子は一列分しかない。私は番号が若かったのでその椅子に座れた。ドリンクも販売していて飲みながら観られるのだが、その椅子席では前後左右に人が座ってしまうとグラスを置く場所がないのでドリンクは頼まなかった。
舞台はファミレスで、テーブルと椅子の上部だけが床から生えてきているような不思議な舞台装置。この舞台装置はなかなか独創的で秀逸だった。登場人物はファミレスの女性店員と一人の女性客と二人連れの男性客。例によって、誰がどの役ということもなく、色々な人が色々な役になったり、その役の人間のことを客観的に語ったりする。
一人の女性客というのは朝会社に行く前にファミレスに寄って、30分日記を書くのを日課としている。ただ、その日記というのが文字を書くということを超越してしまって、今やぐるぐると円を描いているだけなのだ。この30分が彼女にとっての「フリータイム」であり、彼女はその時間をとても大切にしている。

彼女の30分は不自由な日常の中のささやかな自己満足かもしれない。だが作者はそこに確かな「自由」を見る。夢のない、卑小な世界を描いているともいえるだろう。だが、彼女がいつも注文する「160円のコーヒー」が象徴する生活感に根ざして「自由」を見つめる切実な視線は、この時代を生きる者にとっての「自由」とは何かを改めて考えさせる、鋭い指摘になっている。

朝日新聞の劇評にはこう書いてあった。なるほど上手いこと言うなあと思ったが、私はこの芝居を観終わって「だから何なのか?」という思いが強かった。『三月の5日間』はもう少し心に引っかかるものがあった。でも『フリータイム』にはそれがない。なくはないのかもしれないが、その棘が非常に小さなものになってしまっている気がする。もう少しどうにかならないのかなと思う。まあ、ごく個人的な意見ですけどね。


「アフロ」の話は面白かったねw。あの辺のユーモアの感覚は素晴らしい。