妻が図書館で借りてきた本。面白かったというので読んでみた。吉田修一は確か『パークライフ』しか読んだことがない。だから、こんなタイトルの本あったっけなと思ったらデビュー作だった。第84回文学界新人賞を受賞した表題作の他に「破片」と「Water」という中編も収録されている。
『パークライフ』を読んだときには、淡々とした中に巧さの光る作品という感じがした(確か)。ところが、この本はデビュー作だけあって、もうちょっと熱いものが流れている。3篇とも自伝的要素の強い青春ものだが、少しずつトーンが違う。長崎の高校水泳部員たちを描いた「Water」はベタな青春ものだが、「最後の息子」はビデオ日記に残された映像から物語を再構成していくというやや技巧的な作品となっている。「破片」はその中間か。一口に青春ものと言っても、家族の死や屈折した性が折り込まれていて一筋縄では行かない。それでいて、読後感が爽やかなのは著者の持って生まれた資質なのかもしれない。
帯に書かれていた浅田彰の「ナイーブでいてクール、狡猾でいて爽やか」という評は言い得て妙だね。
最後の息子 (文春文庫) | |
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