わたしを離さないで(カズオ・イシグロ)★★★★☆ 11/1読了

自他共に認める優秀な介護人キャシー・Hは、提供者と呼ばれる人々を世話している。キャシーが生まれ育った施設ヘールシャムの仲間も提供者だ。共に青春の日々を送り、かたい絆で結ばれた親友のルースとトミーも彼女が介護した。キャシーは病室のベッドに座り、あるいは病院へ車を走らせながら、施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に極端に力をいれた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちの不思議な態度、そして、キャシーと愛する人々がたどった数奇で皮肉な運命に・・・。彼女の回想はヘールシャムの驚くべき真実を明かしていく――英米で絶賛の嵐を巻き起こし、代表作『日の名残り』を凌駕する評されたイシグロ文学の最高到達点

大評判となった一冊、ようやく読みました。評判に違わぬ傑作だった。カズオ・イシグロは初めて読んだが、薄い皮膜を一枚、一枚重ねていくような書き方は最後に深く静かな感動をもたらしてくれた。

日本生まれのイギリス人作家カズオ・イシグロの第六長編にあたる本書『私を離さないで』は、細部まで抑制が利いていて、入念に構成されていて、かつ我々を仰天させてくれる、きわめて稀有な小説である。

解説での柴田元幸のこの文章が本書の魅力を端的に表している。さまざまなエピソードの積み重ねで構成されているが、イギリスの「ロスト・コーナー」ノーフォークでのエピソードが実に印象深かった。

わたしを離さないで
わたしを離さないでカズオ イシグロ

早川書房 2006-04-22
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おすすめ平均 star
starすぐれた青春小説を読んだあとのような余韻が残った
star傑作です
star静かだが揺るぎない感情の交錯

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