風が強く吹いている(三浦しをん)★★★★★ 12/29読了

箱根の山は蜃気楼ではない。襷をつないで上っていける、俺たちなら。才能に恵まれ、走ることを愛しながら走ることから見放されかけていた清瀬灰二と蔵原走。奇跡のような出会いから、二人は無謀にも陸上とかけ離れていた者と箱根駅伝に挑む。たった十人で。それぞれの「頂点」をめざして…。長距離を走る(= 生きる)ために必要な真の「強さ」を謳いあげた書下ろし1200枚!超ストレートな青春小説。最強の直木賞受賞第一作。

巷でも絶賛されている本書。わざわざこの時期まで取っておいた。その甲斐があったねえ。評判通りの素晴らしい出来栄えだった。

竹青荘(通称アオタケ)という寛政大に通う学生たちが住んでいるアパートがある。そこに新しく入ることになった一年生の蔵原走(かける)。走が入って、住人の数が10人になったことで、リーダー格の灰二(通称ハイジ)は、この10人で箱根駅伝を目指すという無茶な宣言をする。このアオタケの住人がみな個性的なのだが、双子が出てきた時点でこれじゃ「桜蘭高校ホスト部」じゃんと思ったね。漫画好きの三浦しをんホスト部読んでない訳がないしな。リーダーのハイジは当然「環」だ。双子はまさにホスト部の双子だし、漫画がないと生きていけない「王子」は甘いものに目がない「ハニー先輩」か。頭脳的なユキが「鏡夜」で、ガタイが良くてニコチン中毒のニコチャン先輩が「モリ先輩」か。そして走が「ハルヒ」だ。7人と10人だから人数は合わないけど、結構キャラがかぶってるんだよな。夏になるとアオタケのメンバー白樺湖に合宿に行って、ホスト部が軽井沢に合宿にいくところなんかも。
冗談はさておき、ベタベタなスポ根物語だけど、これが泣けるんだよ。俺なんて、予選会突破しては泣き、本番の箱根駅伝では襷を繋ぐたびに泣いてたもんな。話だけを思いつくなら他の人にもできるだろう。だけど、一人一人の走りにきちんとエピソードを肉付けしていく力量は並ではない。三浦しをんの小説は初めて読んだけど、直木賞も納得の一冊だな。かと言って彼女の他の作品全部読むかというとそうでもないけどね。
結構細かいタイムまで書き込んであったから、この本を読み返しながら実際の箱根駅伝中継を見るのも一興かもしれない。逆に箱根駅伝見てからこの本を読むのもいいかもしれない。とにかくこの本は読んだ方がいいよ。

風が強く吹いている
風が強く吹いている三浦 しをん

新潮社 2006-09-21
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