結論から言ってしまうと、この本は傑作です。自信を持ってお薦めします。基本は少年の成長譚だが、家族小説でもあり、ファンタジー・ミステリー・サスペンスの風味もまぶされているので、色々な角度から楽しむことが出来る。
舞台はアラバマ州南部の小さな町ゼファー。主人公はこの町に住む空想好きな12歳の少年コーリー・マッケンソン。彼には3人の親友がおり、その親友たちと数々の冒険を繰り広げた1年間の物語である。まず、冒頭でコーリーと父親は死体をハンドルに手錠で括り付けた車がサクソン湖に落ちるのを目撃する。死体と知らずに助けるつもりで湖に飛び込んだ父親はその無残な死顔を見てしまい、以後悪夢に悩まされることになる。苦しむ父親を救うためにコーリーは探偵役を務めることになる。しかし、犯人はおろか殺されたのが誰なのかさえ分からない。この冒頭の謎が背骨のように最後まで物語を貫いている。
ただし、この謎は物語の水面下に漂っており、水面上ではコーリーと仲間たちの冒険譚が綴られる。川に棲む怪獣オールド・モーゼズ、不思議な力を持つ黒人の老女「ザ・レディ」、密造酒造りをしている田舎ギャング、ゴーサとゴードの不良兄弟、不気味な少女「ザ・デーモン」、素っ裸で町中を歩いている名家の息子ヴァーノン、OK牧場の決闘を目撃したという老ガンマン等々、とにかく脇役たちがみな魅力的なのだ。各節完結のような体裁を取っているのも読みやすい。
1964年のゼファーに行って、是非コーリーたちと共に数々の冒険を体験してみて欲しい。私のようにファンタジーが苦手な人手も大丈夫。ファンタジー色はそれほど濃くないから。面白さは保証しますよ。
少年時代〈下〉 (ヴィレッジブックス) | |
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