野村万作萬斎 狂言の現在2007(関内ホール)

ぎりぎりに会場入り。席は結構後ろの方なんだよな。舞台には当たり前だが柱がない。ただ、柱があるべき位置に「本当はここに柱がありますよ」という印にごくごく短い柱様のものがある。橋掛りも短い。そして一ノ松・二ノ松・三ノ松の代わりに岩のオブジェが配されている。これはなかなかお洒落な趣向だった。鏡板がないので当然老松の絵もない。その代わりに大きなスクリーンがかかっている。
最初に黒紋付きを着た野村萬斎が登場し、演目の紹介をしてくれる。やっぱり野村萬斎はカッコいいね。30分ほど丁寧に説明してくれた。

舟渡聟(ふなわたしむこ)
船頭:野村万作、女:野村万之介、聟:深田博治
聟入り(新婚の夫が舅の家に挨拶に行く)の途中で渡し舟に乗った聟。土産の酒樽に目を付けた酒好きな船頭が、舟を揺らして強引に無心するので、やむを得ず振る舞ううちに、とうとう飲み尽くされてしまい、空っぽの酒樽を持って舅の家に着く。さてやって来た聟を物陰から見て、舅はびっくり。実はその舅とは・・・。

一曲目は「舟渡聟」。もちろん観るのは初めて。とにかく船頭役の野村万作が素晴らしかった。船を漕ぐ仕草は本当に舟に乗っているようだった。狂言独特の擬音も楽しかったね。酒樽からお酒を注ぐときに聟が「ドブ、ドブ、ドブ」と言うのがなんとも面白い。最後は聟と舅が一緒に歌って、膝をトンと突いて終り。不思議な終わり方だった。

千鳥(ちどり)
太郎冠者:野村萬斎、酒屋:石田幸雄、主:高野和
ツケのたまっている酒屋へ行って、またツケで酒を買ってこいと言いつけられた太郎冠者。酒屋の話し好きにつけこんでなんとか酒樽をせしめようと一計を案じると、浜辺で子供が千鳥を捕る様子を、酒樽を千鳥に見立てて話し始め、調子よく囃しながら酒樽に近づき持ち去ろうとするが、気付いた酒屋に見とがめられて失敗する。そこで流鏑馬の模様に話題を転じて実況を再現し、馬に乗るまねをしながら走り回り、酒樽に狙いを定めると・・・。

休憩のあとの二曲目は「千鳥」。これも観るのは初めて。やっぱり面白いのは太郎冠者が「ちりちりや、ちりちり。ちりちりや、ちりちり」と浜千鳥を呼ぶところだ。NHKの『にほんごであそぼ』でもやったらしい。最後は酒樽をせしめた太郎冠者を酒屋が追いかけながら終わる。これは「追い込みドメ」というのだろう。

演目紹介のパンフレットは非常に簡素なものだが、語句解説が載っているのがありがたい。例えば「ろくな所:平らな場所」のように。野村萬斎目当てだったのだが、野村万作の良さの方が印象に残った。さすがという感じか。ただ、席が後ろの方だったのが残念だった。やっぱり狂言能楽堂で観たほうがいいな。ホールだとちょっと広すぎる。9月には「第8回よこはま万作萬斎の会」というのを横浜能楽堂でやるみたいなので、今度はそれを観に行きたい。