『ぼんくら(上)』(宮部みゆき)★★★☆☆ 6/6読了

『ぼんくら(下)』(宮部みゆき)★★☆☆☆ 6/15読了

宮部みゆきの時代物短篇集。深川の鉄瓶長屋で起こる様々な出来事を描いている。一応主人公は本所深川方の同心である井筒平四郎なる人物である。生来の怠け者で甘いもの好き、そして子ども好きでもないのに子どもに好かれる性格である。
鉄瓶長屋には差配人の久兵衛以下、煮売屋のお徳や水茶屋で働くおくめなど、なかなか魅力的な人物がおり、最初の五篇までは連作短篇集のように進む。ところが、そのあとの「長い影」というパートに入っていくと様相が変わる。

つまり、最初の五篇は、すべてその後に続く「長い影」の序章にすぎないという構成になっているのである。(中略)
で、最初の五篇で語られた数々の謎が、「長い影」に入って渾然一体となって展開し、井筒平四郎がそれらの謎の底にひそむ真実を解きあかしていく。(中略)
本書がまぎれもなく長編時代ミステリーであることがわかってくるという仕組みなのだ。実に巧妙な構成といっていいい。

北上次郎は「解説」でこう書いているが、果たしてそうだろうか。
これは私の意見だが、どうも「長い影」は“後付け”のような気がしてならない。つまり、最初の五篇までは普通に連作短篇集として、基本的には一話読み切りのものを書いていたのだが、「長い影」を書き出したときに「実は全部つながってましたってことにしちゃおう」と方向転換したのではないだろうか(正確には「長い影」の一つ前くらいの短篇からそうしようと考えている節はあるが・・・)。
というのも、「長い影」を読んでいると、どうもこじつけっぽい話がたくさん出てくるのだ。その辺が正直残念だった。本作はその大部分を「長い影」が占めるのだが、個人的には普通の連作短篇集にしてもらったほうが良かったな。

「弓之助」や「おでこ」といった個性的な子どもが登場するのも本作の見所だが、平四郎のワトソン役になる(むしろホームズ役か?)弓之助が子どもにしてはいくら何でも思考が大人すぎるのも玉に瑕。

ぼんくら 上
ぼんくら 上
posted with 簡単リンクくん at 2005. 6.17
宮部 みゆき / 宮部 みゆき著
講談社 (2004.4)
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