黒猫/モルグ街の殺人(ポー著、小川高義訳)★★★☆☆ 1/7読了

光文社古典新訳文庫の一冊。JTF翻訳祭での「翻訳は推理ゲームである」と題された小川氏の講演を聞いたのをきっかけに購入。ポーはもちろん読んでいるが、それも遥か昔のことである。新訳ということで読みやすくはなっているが、話自体が古めかしいのは否めない。そんな中でもやはり推理小説の元祖といわれる「モルグ街の殺人」は煌めきを放っている。一人称の語り手を脇役に配して、探偵(オーギュスト・デュパン)と読者のつなぎ役にする手法は、のちのホームズとワトソンを始めとして数々の類作を生んでいる。史上最も有名とも思われる犯人(?)も印象的だ。
新訳に際しての苦労や裏話は巻末の「解説」に記されており、こちらも興味深い。その最後にはこう書かれている。

訳者にとってポーは手応えのある仕事だった。書いてある限られた手がかりから、どれだけ現場の状況を再現できるか、翻訳は一種の探偵業なのだと痛感する。

光文社古典新訳文庫シリーズはなかなか素晴らしい企画だ。読んでみたいけれども取っつきにくい古典に「新訳」という光をあててくれる。いつか『カラマーゾフの兄弟』にも挑戦したいな。

黒猫/モルグ街の殺人
黒猫/モルグ街の殺人ポー 小川 高義

光文社 2006-10-12
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