三四郎はそれから門を出た(三浦しをん)★★★☆☆ 10/30読了

それでも本から離れられない-。人気作家にして筋金入りの活字中毒者、三浦しをんの秘密の日常。初の、ブックガイド&カルチャーエッセイ集。『Gag Bank』『朝日新聞』等に掲載したものに書き下ろしを加える。

三浦しをんの本を読むのは初めて。書評ももちろん良かったのだが、「本を読むだけが人生じゃない」と題された章に含まれる弟のこと題材にした「きょうだい仁義」がとにかく笑えた。引きこもりぎみのフリーターの癖にバスケが好きでやたらに体を鍛えている弟の「みっくん」とその親友のジロウのことが主に書かれているのだが、あんまり書いちゃうとこれから読む人がつまらなくなるので内容は伏せておく。
それから同じ章の「思い出の町」も私の琴線に触れた。

私は毎日毎日、友だちと自転車で小さな冒険に出かけた。(中略)なかでも特別な冒険は、川沿いの道を自転車でずーっと走っていく、というものだった。
もちろん、目的地は海! そしてもちろん、海までたどりつけたことは一回たりともなし!
途中の廃屋などを探検しているうちに夕闇が迫り、「なんでこんなに遠くまで来ちゃったんだろ」と半泣きになりながら、川沿いの道をまた戻ってくることになる。

これは著者の小学生時代の思い出だが、これを読んで私も自分の小学生時代を思い出した。
多分小学5年生だっただろう。スーパーカー消しゴムをプチペンで弾く遊びが流行っていた。私はちょっと遠くの文房具屋までスーパーカー消しゴムを買いに行った。一緒に買っていた友だちとも別れ、帰りは一人だ。季節はおそらく晩秋。田んぼの中の一本道にものすごい向かい風が吹いていた。私は前傾姿勢になりながら必死にペダルを漕いでいた。周りに建物が一切ないから風を遮るものがない。既に辺りは暗くなっている。なんでこんなにしんどい思いをしないといけないんだろうと思いながらペダルを漕いでいたのだが、ふと、「これって、反対方向に向かったらすごい追い風だろうなあ」と思ってしまった。思ってしまったのが運の尽き。私はある地点で自転車をUターンさせ、思いきり追い風に身を任せてしまった。素晴らしい追い風だった。後にも先にもあんな追い風に吹かれて自転車に乗ったことはない。そして思いっきり逆走した後で、奇跡的に風向きが変わり・・なんてことがある訳がない。せっかく今まで進んだ道を半ベソかきながら戻ることになった。
今でも時々思い出すほろ苦い思い出だ。

三四郎はそれから門を出た
三四郎はそれから門を出た三浦 しをん

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