不思議のひと触れ(シオドア・スタージョン)★★★★☆ 1/20読了

1930 年代末からアメリカで活躍したSF作家シオドア・スタージョン(1918−1985)の短編集。本書収録のショートショート「高額保険」で、1938年にデビューしたスタージョンは、『人間以上』『夢見る宝石』などで、一部のSFファンの間でカルト的な人気を博した作家である。しかしながら、生前は、あまり評価に恵まれず、我が国における翻訳点数も多くはなかった。SFというジャンルを超えた大胆な発想と、独特の世界観が再評価されるのは、没後となってからのことである。

なかでも、220編余りに及ぶという短編小説の数々は、「アメリカ文学史上最高の短編作家」と激賞されるほど評価が高い。本書収録の10編は、その中から厳選し、新たに訳出されたものである。ある女性の私生活を覗き見した男の奇妙な体験を描いた怪奇小説「もうひとりのシーリア」。子どもの心に潜む残酷さを捉えた「影よ、影よ、影の国」。言葉を話す石像と主人公とのやりとりがユーモラスな「裏庭の神様」。その味わいは、じつにバラエティー豊かで、改めてその力量に驚かされるものばかりだ。


前にも書いたが、「アメリカ文学史上最高の短編作家」と言われてしまっては読まずにはいられない。私はSF読みではないので、純粋なSFではないところも取っつきやすい。とにかく発想の奇抜さには驚く。読んでいるときは、これで「アメリカ文学史上最高の短編作家」なのかという気がしたが、読み終わってからなにかこうジワジワくるものがある。編者の大森望が締めくくりの一編として最後に持ってきた「孤独の円盤」が一番良かったな。円盤が宇宙をさまよう"Message in a bottle"であるという発想が素晴らしいし、ラストの孤独な男女な出会いのシーンはいつまでも深い余韻を残す。
大森望による解説も詳しいので、シオドア・スタージョン入門としてうってつけだった。『輝く断片』や『一角獣・多角獣』などの他の作品も是非読んでみたい。

不思議のひと触れ
不思議のひと触れシオドア・スタージョン 大森 望

河出書房新社 2003-12-22
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おすすめ平均 star
starすごいな。
star孤独を終わらせる優しさ
star児戯に等しい単純なメロディーが・・・

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