燕は戻ってこない(桐野夏生)★★★☆☆ 7/21読了

この身体こそ、文明の最後の利器。

29歳、女性、独身、地方出身、非正規労働者
子宮・自由・尊厳を赤の他人に差し出し、東京で「代理母」となった彼女に、失うものなどあるはずがなかった――。

北海道での介護職を辞し、憧れの東京で病院事務の仕事に就くも、非正規雇用ゆえに困窮を極める29歳女性・リキ。「いい副収入になる」と同僚のテルに卵子提供を勧められ、ためらいながらもアメリカの生殖医療専門クリニック「プランテ」の日本支部に赴くと、国内では認められていない〈代理母出産〉を持ち掛けられ……。

『OUT』から25年、女性たちの困窮と憤怒を捉えつづける作家による、予言的ディストピア

今回、代理母の話だが、個人的に「ベイビー・ブローカー」、「すべての月、すべての年 ルシア・ベルリン作品集」など、最近その手の話を観たり読んだりすることが多い。そういう時代なんだろうか。本作は、生殖医療、貧困問題、ジェンダーなど、まさに今の時代の問題を詰め込んであるが、何よりエンタメとして読んでいて面白い。そこが桐野夏生の凄いところだな。ラストは痛快だったね。