光圀伝(冲方丁)★★★★☆ 1/30読了

なぜ「あの男」を自らの手で殺めることになったのか―。老齢の光圀は、水戸・西山荘の書斎で、誰にも語ることのなかったその経緯を書き綴ることを決意する。父・頼房に想像を絶する「試練」を与えられた幼少期。血気盛んな“傾奇者”として暴れ回る中で、宮本武蔵と邂逅する青年期。やがて学問、詩歌の魅力に取り憑かれ、水戸藩主となった若き“虎”は「大日本史」編纂という空前絶後の大事業に乗り出す―。生き切る、とはこういうことだ。誰も見たこともない「水戸黄門」伝、開幕。

著者の気合が感じられる大著で、実に読み応えがあった。ドラマの「水戸黄門」しか知らなかったので、実際にはどういう人だったのかを知る端緒になったのもよかった。
資料をずいぶん調べたんだろうなというのが伺えるのだが、その「調べた感」が作中に現れてしまうのが残念だった。同じ歴史物の大著では、飯嶋和一の『黄金旅風』等の方が小説としての面白さがあるね。

光圀伝

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