きのうの神さま(西川美和)★★★★☆ 7/14読了

『ゆれる』で世界的な評価を獲得し、今、最も注目を集める映画監督が、日常に潜む人間の本性を渾身の筆致で炙りだした短編集。『ディア・ドクター』に寄り添うアナザーストーリーズ。

明日発表の直木賞西川美和の本作が獲るんじゃないかな。それくらい素晴らしい。
5つの短編からなっているが、どの作品にも拭いがたく「死」の気配がまとわり付いている。かといって、雰囲気が重々しいわけではなく、どちらかと言えば飄々とした感じがする。
1つを選べば、表題作の「ディア・ドクター」かな。出色の出来と言っていい。兄と弟の関係、そして兄弟と父親の関係が実によく描かれている。
最後の短編「満月の代弁者」のラストでは向田邦子の「大根の月」を思い出した。このまま行けば、西川美和は平成の向田邦子になれるかもしれないね。

きのうの神さま
きのうの神さま西川 美和

ポプラ社 2009-04
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おすすめ平均 star
star作家としても才気溢れる西川美和のもうひとつの「ディア・ドクター」
starそれぞれの『普通』を見定める珠玉の短編集
star映画監督だけではもったいない!!

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