スクリーンが待っている(西川美和)★★★☆☆ 8/12読了

ああ、世界は奇跡に満ちていたんだな。

「ニヤニヤ、クスクス。これ、立派な映画作りの教則本です」役所広司
「ため息がでるほど、画には映らない想いがつまってる」仲野太賀
一貫してオリジナル作品に拘ってきた著者が、初めて小説をもとにした作品のメガホンを取った。原案は、佐木隆三氏の『身分帳』。13年という最後の刑期を終えた元殺人犯の人生を描き、舞台を昭和から現代に移して脚本化。『身分帳』との出合い、脚本執筆のために潜り込んだ婚活パーティ、一か八かの撮影現場、コロナによる編集作業の休止など、映画の制作過程の出来事が時にユーモラスに、時にアイロニカルに描かれる。
『すばらしき世界』は、2021年2月11日に公開。主演の役所広司さんはじめ、仲野太賀さん、長澤まさみさんなど豪華キャスト。2020年9月に行われたトロント国際映画祭への正式出品など既に注目を集めている。

本書では主に『すばらしき世界』の制作過程が綴られている。これが結構たっぷりな分量なので読み応えがある。私は映画を観ていたからいいが、観ていない人が読むとちょっと分かりづらいかもしれない。でも、これを読んだら映画を観たくなるだろうな。私ももう一度観たくなった。巻末の「蕎麦屋ケンちゃん失踪事件」という短編が思いの外面白くて得した気分だった。