誰かが手を、握っているような気がしてならない(前田司郎)★★★☆☆ 4/30読了

神の声が聴こえる娘と、その家族を描く著者初の<長編小説>
「でも最近の神様ちょっと考えすぎだと思うんだよね」
「そういうこと言うから家族がぐちゃぐちゃになっちゃうんでしょ」
『恋愛の解体と北区の滅亡』『グレート生活アドベンチャー』に続く意欲作!!

岸田國士戯曲賞を受賞したばかりの前田司郎による長編小説。彼の本は読んだことがなく、舞台もテレビでしか見たことがないが、もちろん五反田団のことは知っている。実は『グレート生活アドベンチャー』を図書館にリクエストしているのだが、その順番が回ってくる前にこの本を買ってしまった。
「神の声が聴こえる娘と、その家族を描く」ということで、まあそのまんまなんだけど、これがなかなか不思議な小説だ。話者が神様だったり、父親だったり、母親だったり、二人の娘だったりとめまぐるしく変わるのだが、改行せずに唐突に変えるので、いつのまにか話者が変わっていて「あれっ」ということになる。もちろんわざとやっているわけだが。
ちょっと変わった家族の物語として読み進めていくと、最後で根底から覆されることになる。ネタばれになるので書けないが、そこに至ってなぜこのような書き方がされているのかとか、タイトルの意味なんかが見えてくる。各方面で評価が高まっているのも納得の一冊だった。

誰かが手を、握っているような気がしてならない

誰かが手を、握っているような気がしてならない