別離のとき(ロジェ・グルニエ)★★★☆☆ 6/2読了

短編特集を組んでいた『考える人』でフランス人作家ロジェ・グルニエのことを初めて知った。挫折や幻滅の物語が多く、「挫折の小説家」と呼ばれているらしい。本書を読んでなるほどと納得した。
戦時下のフランスで恋人に逢いに行くためにはるばる列車を乗り継いで行ったリュドヴィックも(「別離の時代」)、学生時代に同じ音楽学校にやってきたヴァイオリン弾きの女性に恋をしたトマも(「あずまや」)、自分の牧場にやってきたドイツ人の作男に恋した少女マリも(「菩提樹の下で」)、みんな最後には苦い汁を味わうことになる。
ただ全てがそういう話ではなく、オチのついたショート・ショートである「モンマルトルの北」や、最後の一行でしんみりとさせる「オスカルの娘」などのヴァラエティもある。
ロジェ・グルニエは1919年生まれ。本書収録の10篇のうち1つを除いては80歳を越えてから書かれたものである。人生経験の豊富さを感じさせる作品群だが、色っぽい描写も結構あって、「まだまだ枯れちゃおらんよ」というところも見せてくれる。
「ハッピー・エンド」は紆余曲折を経て辿り着く長編のラストにはふさわしいが、人生の一断面を切り取る短編には「ビター・エンド」の方がふさわしいのかもしれない。ロジェ・グルニエはそんなことを思わせてくれた。


別離のとき
別離のとき
posted with 簡単リンクくん at 2007. 6. 2
ロジェ・グルニエ〔著〕 / 山田 稔訳
みすず書房 (2007.2)
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