あやつられ文楽鑑賞(三浦しをん)★★★★☆ 5/28読了

『舞台裏おもて』などを読むにつけ、「文楽」観に行きたいなあと思っていたところだったので、私にとっては「まさに」のタイミングでの刊行だった。


内容も、単に「文楽観てきましたよ〜」というレポートに留まらず、三味線さん、人形さん、太夫さんの楽屋を訪れてインタビューしたり、文楽と同じ演目の歌舞伎を観に行ったり、文楽を題材にしている落語を聴いたり、三味線さんの襲名披露公演に行ったりと実にバラエティに富んでいる。


一方で、演目をじっくり紹介して、登場人物の心情を考察している回もある。「女殺油地獄」では主人公が殺人を犯すに至るまでの心情を事細かに推理し、「仮名手本忠臣蔵」では現在の常識からは考えられない登場人物たちの行動にツッコミを入れまくる。このツッコミが実に鋭くて笑える。例えば、こんな感じ。

おいおいおいおい! もうツッコミ疲れたよ。勘平、おまえちょっとそこへ座れ。間違ってひとを殺しちゃったんだぞ? それなのに、介抱するでも恐れおののくでもなく、財布を奪って逃げるってのは、いったいどういう了見だ。おまえはそれでも武士か!


文楽・愛」に充ち満ちた一冊だ。「文楽なんて興味ない」という人も、この本を読めば観に行きたくなっちゃうんじゃないかなあ。私なんてもう観に行きたくて行きたくて堪らない。ちょうど東京公演が終わって、夏は大阪へ行ってしまう。いっそ「文楽観に大阪まで行くか!」とさえ思っちゃったよ。


あやつられ文楽鑑賞
三浦 しをん著
ポプラ社 (2007.5)
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