朝日新聞における悩み相談室の名(迷?)回答者といえば中島らもだったが、中島らも亡き後は何といっても明川哲也だろう。人によっては「ドリアン助川」の方が通りがいいかもしれない。そのドリアン助川、もとい明川哲也の小説である。
主人公はカラスのジョンソンだ。まだ子どものジョンソンは、「褐色の影」の襲撃を受けて巣から落ちてしまう。それをたまたま拾ったのが工場で清掃のパートをしていた里津子だ。彼女には陽一という小学生の息子がいるが、離婚しているので母子家庭である。市営住宅に住むこの親子が元気になるまでという期限付きでジョンソンを飼うことにするが・・・。
新聞紙上における明川哲也の回答は、突拍子のないことを言っているようで、その根底には常に「愛」がある。この物語もそうだ。ジョンソンが陽一のところを旅立ったのち、お互いに非常に辛い状況が待ち受けている。絶望の淵に追いやられたジョンソンと陽一は最後の最後に心を通い合わせる。この切なくて感動的なラストには胸を打たれた。