イカとクジラ ★★★★★ 新宿武蔵野館

パークスロープとは、作家やアーティストが多く住むことで有名な、NYの高級住宅地。そこに住むことをステイタスとするインテリ夫婦と息子たちの悲しくて可笑しい家族の物語。カフカフィッツジェラルドなど、作家の名前が日常的に飛び交う家庭で、背伸びして育った子供たちは、子供らしさを知らず、両親の離婚に、どう混乱していいかも分からない。大人になれない親と、子供になれない息子。都会の歪んだ家族を鋭い洞察力で描いたのは、新進気鋭の監督、ノア・バームバック。『ロイヤル・テネンバウム』のウェス・アンダーソンが認めた鬼才だ。出演は、『愛と追憶の日々』のジェフ・ダニエルズと、『エミリー・ローズ』のローラ・リニー

上映時間:81分
監督:ノア・バームバック
脚本:ノア・バームバック
出演:ジェフ・ダニエルズローラ・リニージェシー・アイゼンバーグオーウェン・クライン 、ウィリアム・ボールドウィンアンナ・パキン 、ケン・レオン 、ヘイリー・ファイファー

そもそも「イカとクジラ」ってタイトルは何なんだ? 誰もがそう思うだろう。私もそう思った。それが気になって仕方のない人は、脚本・監督のノア・バームバックの術中に嵌まっていると言えるだろう。
実にいい映画だったのだが、どこがどういうふうに良かったのかを説明するのは難しい。離婚してしまった夫婦とその息子たちの生活が淡々と綴られており、人によっては「だから何なんだよ」と思うかもしれない。しかし、この淡々とした描写が実にリアルであり、笑って泣けるのだ。『ライフ・アクアティック』でも親子の絆はひとつの重要なモチーフになっていたが、今回はそれがもっとクローズアップされている。家族を演じた4人の演技はみな素晴らしかった。あまり有名すぎる俳優じゃなかったのも良かった。長男のウォルトが、タイトルにもなっている、イカとクジラの話を思い起こすシーンにはちょっとジーンと来たね。今年のベストになる可能性が高いな。