雲(エリック・マコーマック)★★★★☆ 7/2読了

出張先のメキシコで、突然の雨を逃れて入った古書店。そこで見つけた一冊の書物には19世紀に、スコットランドのある町で起きた黒曜石雲という謎の雲にまつわる奇怪な出来事が書かれていた。驚いたことに、かつて、若かった私はその町を訪れたことがあり、そこで出会ったある女性との愛と、その後の彼女の裏切りが、重く苦しい記憶となっていたのだった。書物を読み、自らの魂の奥底に辿り着き、自らの亡霊にめぐり会う。ひとは他者にとって、自分自身にとって、いかに謎に満ちた存在であることか…。幻想小説、ミステリ、そしてゴシック小説の魅力を併せ持つ、マコーマック・ワールドの集大成とも言うべき一冊。

とても分厚い本だが、柴田元幸の訳者あとがきを読んで面白いに違いないと思い読んでみた。結果・・・、期待の上を行く面白さだった。いい意味での「作り話」感が満載で、舞台も世界を股にかけているので、あちこちに行けない今、本の中での非日常と旅情を味わうことができた。それにつけても、不思議で魅力的な物語だった。