深夜のバー。小学校のクラス会の三次会。四十歳になる男女五人が友を待つ。
大雪で列車が遅れ、クラス会同窓会に参加できなかった「田村」を待つ。「田村」は小学校での「有名人」だった。有名人といっても人気者という意味ではない。その年にしてすでに「孤高」の存在であった。
貧乏な家庭に育ち、小学生にして、すでに大人のような風格があった。そんな「田村」を待つ各人の脳裏に浮かぶのは、過去に触れ合った印象深き人物たち。
今の自分がこのような人間になったのは、誰の影響なのだろう----。
四十歳になった彼らは、自問自答する。それにつけても田村はまだか? 来いよ、田村。
酔いつぶれるメンバーが出るなか、彼らはひたすら田村を待ち続ける。
そして......。
自分の人生、持て余し気味な世代の冬の一夜を、軽快な文体で描きながらも、ラストには怒濤の感動が待ち受ける傑作の誕生。
印象的な表紙イラストの人物は「田村」ではなくて、バーのマスターの花輪春彦なんだな。朝倉かすみの本は読んだことがなかったが、id:juice78さんのレビューを見て読みたくなった。
四十歳になる男女五人が「田村」を待ちながら、それぞれの過去を振り返る。なかでも良かったのは池内暁のエピソードである「パンダ全速力」。上司である二瓶正克が池内に言った「全速力で走れよ、きみ」は深く印象に残る。
これも『ゴドーを待ちながら』の亜流の一種なんだろうが、こういう「ゴドー」の亜流もなかなか面白いね。
田村はまだか | |
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