「好きを貫く」に関して

珍しくいつまでも拘っているが、『ウェブ時代をゆく』を読んで以来、「好きなことを貫いてそれを職業にできればこれほど幸せなことはない」という「好きを貫く」至上主義みたいな考え方がどうにも気持ち悪くて仕方がないのだ。もちろん、そういう考え方も悪くはないのだが、みんながみんな「梅田さんの考え方は素晴らしい。僕も(私も)好きを貫いて生きていきます!」なんてなっていたら嫌だなと思っていた。


ところが、みんながみんなそう思っているわけではないのだなと知って少しホッとした(まあ、そうでないと困るのだが)。

「好きを仕事に」とは言うが、そもそも、そんな確固たる「自立した主体」などという

ものは存在しない。

「ほんとうの自分」がどこかにあるはずだと、「自分探し」を続ける若者がよくいるが、

多くの場合、自分なんかいくら探したって見つかりゃしないのである。

ただ、これはかなりの人類に共通しているのではないか。悩んでいる時には、より手を使う道を選んだ方が気持ちがよい、というのは。まだ好きが見つからない人は、とりあえずその辺に転がっている嫌なことを片付けるのも悪くないよ。

二箇所から引用させてもらったが、私の考えもこれらの考えに近い。要はこれから社会に出ようとしている若い人たちのことなのだ。「自分探し」や「好きなことは何なのかの追求」をするのはいいのだが、その際に立ち止まらずできるだけ手を動かして欲しいということ。『ウェブ時代をゆく』に盲目的に感化されないで欲しいということだ。もちろん、立ち止まったり回り道をしたりしたほうがいい場合もあるだろうが、一般的には人生を前に進めた方がいいと思うし、そうしながらでも色々と考えることはできると思う。