シッコ ★★★☆☆ TOHOシネマズ川崎

医療保障の破滅によって崩壊し、粉々にされ、場合によっては絶たれてしまったごく普通のアメリカ人数名のプロファイルで幕をあける本作は、その危機的状況が、4700万人の無保険の市民たちだけでなく、官僚形式主義によってしばしば締め付けられながらも保険料を律儀に支払っている、その他数百万人の市民たちにも影響を及ぼしていることを明らかにする。いかにしてこれほどの混乱状態になったのか、それだけを述べた後、観客はすぐに世界へ連れ出される。カナダ、イギリス、フランスといった国を訪れるのだが、それらの国々では、国民全員が無料医療という恩恵を受けているのだ。またムーアは、9・11事件の英雄の一団を集結させる。彼らは、アメリカにおいて医学的治療を拒否され、今も衰弱性疾患に苦しむ救助隊員たちであった・・。


上映時間:123分
監督:マイケル・ムーア
脚本:マイケル・ムーア
出演:マイケル・ムーア

デス・プルーフ』の後にすぐ『シッコ』へ。それにしてもアメリカはひどいな。逆に医療費がタダのイギリスやフランスは実に羨ましく見えた。特にフランスは保育園もタダ、大学の授業料もタダ、しかもベビーシッターもタダで来てくれるんだもんな。フランスに移住したくなったよ。まあ、これは単なる一面であって、フランスが全ての面でバラ色だとは思わないけどね。
9・11事件でボランティア活動をした人たちで、その後様々な疾患に苦しむ人たちがいる。彼らは医学的治療を拒否され、高額の薬が買えずに苦しんでいる。一方で、グァンタナモに収監されているテロリストたちは、無料で通常のアメリカ国民以上の医療を受けている。何たる皮肉。映画の終盤でマイケル・ムーアがそのボランティア活動をした人たちを船に乗せてグァンタナモを目指し、船の上から拡声器で「この人たちに、収監されている人間と同等の医療を受けさせてくれ」と要求する。痛烈なるアメリカ社会への皮肉であり、毎度マイケル・ムーアの行動力には驚かさせる。
こと医療にとどまらず、いろいろと考えさせられる映画だった。