私は、人の仕事場や本棚が気になるタチである。だから『河童が覗いた仕事師12人』(妹尾河童)なんかも面白く読んだクチだ。本書の内澤旬子はその妹尾河童ばりの精密な俯瞰図を駆使して、林望から上野千鶴子まで各界の「センセイ」たちの書斎を写し取っている(妹尾河童が『河童が覗いた仕事師12人』では得意の俯瞰図を使用せずに写真を使っているのとは対照的だ)。
人によっては写真を撮ってしまえば一発じゃないかと思うかもしれない。しかし、部屋を俯瞰する写真というのは撮れないのだ(屋根があるからね)。その点、絵ならどんなアングルでも思いのままだ。そして実は、彩色すらされていないこの絵を見ているほうが想像力が掻き立てられるのだ。
というように、最初は精密な絵の方に目が行きがちだが、特筆すべきは文章の方なのだ。内澤旬子という人の文章は初めて読んだが、その文章は暖かみがありつつも対象にべったりとは寄り添わない。この絶妙な距離感が読んでいて清々しい。
発表媒体によって多少の違いはあるが、基本的には絵が見開き2ページ、それに続く見開き2ページに文章が2段組で配されている。この分量にきっちり文章を収める技術もさすが。
書斎を持つなんて夢のまた夢だけど、各界の「センセイ」たちの書斎は書斎を夢想するときの参考にはなったかな。月並みな感想だけど、著者である内澤旬子自身の書斎も見てみたいね。
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