個人的には『ピンポン』『鉄コン筋クリート』に続く、3作目の松本大洋作品となる。
母親と2人で暮らす小学生の花田茂雄が夏休みに離れて暮らす父親の元に行くことから物語は始まる。この父親、花田花男は既に30歳を過ぎているのだが、未だに巨人の4番になることを本気で夢見ているちょっと変わった人物である。こうして、大人のような茂雄と子どものような花男の共同生活が始まる。自分と母親を捨てて、一人出て行ってしまった父親を最初こそ憎んでいた茂雄だが、一緒に暮らすうちに茂雄の気持ちも段々と変わってくる。そして・・・。
『ピンポン』と『鉄コン筋クリート』は紛れもない傑作なのだが、『花男』も全くこの2作に見劣りしない(ちなみに「花田花男」は「はなだはなお」で『花男』は『はなおとこ』と読む)。それにしても花田花男とは何とも憎めない男である。『ピンポン』同様、江ノ島が舞台なのだが、町の人たちとの交流、そして息子茂雄との交流は読んでいて、(陳腐な言い回しを許して欲しい)、心が温かくなる。そしてラストシーン。感動しましたよ、私は。
ストーリーももちろんいいのだが、松本大洋はやはりあの独特の画風がいい。そして、あのコマ割り、何気ない中に深いの意味のあるカット、余人には思いつかないアングル、はっきり言って天才である。そして繰り返し出てくる「冷たいか茂雄、それが海だ!!。」等のセリフも実に印象的である。
幸せなことに、私にはまだ読んでいない松本大洋作品がある。そして、『ピンポン』『鉄コン筋クリート』『花男』を含めて、松本大洋作品をまだ一度も読んだことのない人は、私よりもさらに幸せである。
花男 (1) (Big spirits comics special)
- 作者: 松本大洋
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1998/10/01
- メディア: コミック
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