狗賓童子の島(飯嶋和一)★★★☆☆ 12/3読了

歴史小説の巨人、6年ぶりの新刊!!
弘化三年(1846)日本海に浮かぶ隠岐「島後」に、はるばる大坂から流された一人の少年がいた。西村常太郎、十五歳。大塩平八郎の挙兵に連座した父・履三郎の罪により、六つの年から九年に及ぶ親類預けの果ての「処罰」だった。
ところが案に相違して、島の人々は常太郎を温かく迎えた。大塩の乱に連座した父の名を、島の人々が敬意を込めて呼ぶのを常太郎は聞いた。
翌年、十六歳になった常太郎は、狗賓が宿るという「御山」の千年杉へ初穂を捧げる役を、島の人々から命じられる。下界から見える大満寺山の先に「御山」はあったが、そこは狗賓に許された者しか踏み入ることができない聖域だった。
やがて常太郎は医術を学び、島に医師として深く根を下ろすが、徐々に島の外から重く暗い雲が忍び寄っていた。

飯嶋和一は何冊か読んでいるのだが、今回ほど読むのがしんどかった本はない。市井の人々が圧政に苦しみ、ついに蜂起する、というストーリーは大体今まで通りなのだが、苦しんで苦しんで爆発的な蜂起という感じではなく、小さく蜂起してはまた戻り、小さく蜂起してはまた戻り、という感じなので、大きな盛り上がりがない。そこが辛かった。
ただ、もちろん読み応えはありすぎるほどあったし、個々のエピソードは十分に面白かった。隠岐の島のことは今まで何も知らなかったので、隠岐の話というのも興味深かった。この本を読むと、隠岐の島の人たちがいかにお上から虐げられていたのかがよく分かる。今の沖縄と国の関係を見ていると、この頃から何も変わっていないんだなと思わされる。

狗賓(ぐひん)童子の島
狗賓(ぐひん)童子の島飯嶋 和一

小学館 2015-01-28
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